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研究論文が筑波大学HPにて紹介されました

2015年7月30日




  筑波大学生命環境系の町田龍一郎教授(菅平高原実験センター昆虫比較発生学研究室)および同研究室のアレクサンダー・ブ ランケ特別研究員、ボン大学B. Misof 教授研究室は高輝度光科学研究センター(JASRI)SPring-8利用研究促進部門の上杉健太朗副主幹研 究員は、ドイツとスイスとの共同研究により、シンクロトロンμCTでの非破壊の機能形態学的研究を行い、昆虫類の口器の祖先型を明らか にし、昆虫類の口器の進化に関する新たな見方を提唱しました。

  昆虫は地球上で最も多様化した生物であり、これまでに記載されている全動物種の約75%を占めています。昆虫がこのような 多様化を可能にした大きな要因の1つとして、口器を特殊化させることで多種多様な食物を利用できるようになったことがあげられます。 口器の多様性は、バッタなどに見られる普通の「噛み口」から、セミ、ハチ、チョウなどで見られる「吸収口」、ハエなどの「舐め口」な ど、実に多様です。これまでは、単純な「噛み口」が最初にあり、それがいくつかの系統群で「口器の構造的連関 (Structural Mouthpart Interaction 、以下 SMIと略)」の原理によって特殊化してきたという考え方が主流でした。
  今回、昆虫の原始系統群であるトビムシ目とコムシ目の口器をシンクロトロンμCTにより詳細に検討しました。その結果、昆 虫の祖先型の口器は、SMIによって機能するタイプであったことが明らかとなりました。これは、昆虫の口器は、もともとはSMIのない単純 な噛み口だったとする従来の考え方を否定する結果です。すなわち、まず最初に、SMIによって機能する口器が生まれ、それからトンボや バッタなどに見られるSMIを失った「噛み口」が現われ、その後、二次的に多様なタイプのSMI、すなわち、セミ、ハチ、チョウなどの 「吸収口」、ハエなどの「舐め口」が出現したと考えられるのです。
  本研究成果は、これまでの昆虫類の口器の進化の理解を大幅に変えることになります。他の「無翅昆虫類」や有翅昆虫類の重 要なグループの口器が、シンクロトロンμCTを用いて詳細に機能形態学的に検討されることが期待されます。これにより、さらに詳細な昆 虫類の進化像が描かれることになるでしょう。

  本研究の成果は、英国時間2015年7月22日付で「英国王立協会紀要 B: 生物学 〔Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences (Proceedings B)〕 誌」でオンライン公開されました。

  本研究は、SPring-8(日本)、DESY(ドイツ)、PSI(スイス)の各放射光施設の支援、日本学術振興会特別研究員奨励費 および基盤研究、筑波大学−ドイツ学術交流会(DAAD)パートナーシッププログラムの助成により実施されました。





Blanke, A., P. T. Rühr, R. Mokso, P. Villanueva, F. Wilde, M. Stampanoni, K. Uesugi, R. Machida and B. Misof (2015)
Structural mouthpart interactions evolved already earliest lineages of insects.
Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences (Proceedings B), 282, 2015 1033.

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筑波大学HP注目の研究

8月5日の信濃毎日新聞29面にも関連記事が掲載されました!!


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