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中央アルプスの山岳森林限界で行っている温暖化実験が信濃毎日新聞で紹介

2011年9月28-30日

信濃毎日新聞の2011年10月1日朝刊で、筑波大学菅平高原実験センターなどが中央アルプスの山岳森林限界で行っている温暖化実験が紹介されました。この実験は、「地球環境再生プログラム―中部山岳地域の環境変動の解明から環境資源再生をめざす大学間連携事業―」(http://jalps.suiri.tsukuba.ac.jp/)のために、信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター西駒ステーションで、信州大学などと共同で行っているもので、菅平高原実験センターからは田中助教・金井技術職員・正木技術職員が参加しています。

高い山に登っていくと、亜高山帯の神輿樹林から、高山帯の低木・ハイマツ・お花畑に移り変わっていきます。ここを森林限界といい、西駒ステーションでは標高2550mから2600m付近です。高木がすめるぎりぎりの温度のため、標高がわずかに下がって温度が上がると、高山帯から森林に、景色や生物相が劇的に変化します。このような、地球温暖化の影響をもっとも受けやすい場所で、温暖化によって生態系や生物多様性がどのような影響を受けるのかを調べることは、地球温暖化の影響を解明して対策を講じる上で、極めて重要です。そこで2010年9月下旬、西駒ステーション内の森林限界周辺に調査区を設置し、10基の温暖化装置を設置しました。この装置は当センターの金井技術職員,正木技術職員が昨年開発したもので、電話ボックスくらいの大きさで、天井がなく四方が透明なポリカーボネート製の波板です。これだけの単純な装置ですが、温室効果によって内部の温度が日中は5度程度高くなります。5基は一年中波板を取り付けておく通年温暖化タイプ、残りの5基は積雪期に波板を取り外してしまう夏季温暖化タイプです。 冬の積雪によってどのくらい装置が損傷するのか全く未知数でしたが、4基で波板が破損したり、フレームが曲がってしまいました。今回、雪圧に対する補強を行いました。雪圧は部分的に非常に高く、力を受ける方向も一定ではありません。積雪期は未知の状況のため様々な可能性を検討しながら補強作業を行いました。また、夏期温暖化タイプの波板の取り外しを行いました。そして、調査区の低木・草本・コケ・地衣類などの調査や窒素循環などの土壌調査を行いました。現地ではすでに落葉が始まっていましたが、装置内は落葉が遅く、緑色の植物が目立ちました。その他にも、土壌の分解・生成・呼吸などの物質循環に関する観測も継続中です。 今回は9月28日〜30日までの3日間、山での作業を行いました。当センターの3人のほかに信州大学理学部・農学部から計9名の参加者があり、12名で調査区近くにある西駒山荘という山小屋に宿泊して作業を行いました。初日、4時間30分かけて登山口から調査地まで登り、その後各自の作業を始めました。初日と二日目は秋晴れの中、順調に作業を進めることができました。最終日は霧雨の中での作業になりましたが、予定通りに作業を終了させることができました。その後2時間30分かけて下山しました。次回は来春、雪が解けたころに夏季温暖化タイプの装置に波板を取り付けるために登る予定となっています。


信州大学西駒演習林における植生調査


信州大学西駒演習林、OTC設置区の様子


調査区付近からの眺望




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